“歯科医療の本質は地域にある”大学教授を退職後の新規開業
新潟市のほぼ中央部に位置する江南区。
新潟から会津若松方面に抜ける松並木の旧国道49号線沿いに「よこごし野村歯科クリニック」が2015年6月に開業した。
若い時から故郷で開業したいという想い
院長の野村修一先生は、新潟大学大学院医歯学総合研究科包括歯科補綴学分野の教授としてご活躍され、2014年3月に定年退職された。そして、新たに「よこごし野村歯科クリニック」を開業された。
「実は、若い時から故郷で開業したいという想いがありましたが、大学も好きだったし、やりたいこともあったので最後まで勤めました。そして、ひと区切りがついたところで、再び若い時の想いが出てきたわけです。そのとき、札幌で勤務医をしていた娘が開業するなら手伝いたい、とタイミングよく言ってくれたので開業を決めました」
野村先生は、かつてご両親が呉服・衣料品の店を営んでいた場所で、建物も残っていたことから、この地以外では開業する気はなかったと語られる。
先生は新潟大学歯学部出身の臨床系では初めての教授であり、退職後のご開業も新潟大学では第1号である。ご専門は有床義歯を中心とした補綴で、これまで高齢者歯科医療分野で多大な功績を残されてきた。副院長の野村真有美先生も北海道大学大学院の高齢者歯科学教室を修了されているので、高齢化が進む地域にとっては非常に心強いクリニックとなった。
摂食嚥下障害にならないように高齢者をサポート
院内は明るい動線分離で、3つの診療室が半個室的に造られている。高齢者をターゲットに、車椅子でも楽に移動ができる完全バリアフリー設計である。
「ユニットはレフィーノ2台、イオムレガロ1台を導入しました。レフィーノはお年寄りが座りやすいので選んだ」と語られる。実は、大学病院にもレフィーノは導入され、全盲患者さんが毎回レフィーノを指定され“どのユニットよりも安心できる”と言われていたので、高齢者にも最適だと感じられた。
野村先生は、摂食嚥下障害も含めてトータルに高齢者の臨床指導をされてきたが、この医院では、摂食嚥下障害になりそうな高齢者に対して、そうならないようにサポートしていきたいと語る。
「虚弱になった高齢者を少しでも回復させ、悪化させないためにも口から食べることは大切です。しかし、残念ながらそのための義歯やその製作法などは体系化されていません。常々、臨床の本質は現場にあると考えていましたので、これからは開業医の立場から高齢者をサポートする道筋をみつけたいと思います」
近所の人が気軽に集まれるクリニックに
「よこごし野村歯科クリニック」には2つのモットーがある。『すべては患者さんの笑顔のために』と『魅せましょう歯科医療の底力を』である。
長年、大学で培ってきた歯科医療の力を、診療所の医療現場から患者さんのためにすべて提供する。どこまで行えるかわからないが、第二の歯科医師人生として地域医療のために身を捧げたいという。
「かつて、ここで両親が商売をしていた時に、買い物でなくても近所の人が集まり茶飲み話をしていました。将来はそんなクリニックにしたい。たとえ治療でなくても近所の人が集まって、お互いを気遣うような生活リハビリ空間にしたいですね。機能回復だけでなくリハビリまでも歯科医療ですから、訪問診療も含めて高齢者の健康支援をしていきたいと考えています」
生まれ育った場所で、歯科医師としての第二幕を開けた野村修一先生の「よこごし野村歯科クリニック」。高齢者歯科の分野で、現場からどのような道筋を開いてくれるのか楽しみである。