みなさんはう蝕除去を完了とする目安をどのように決めているだろうか? 経験に応じて象牙質の硬さや着色の程度を基準にされている方も多いだろう。当然のことながらう蝕が残存した状態では、期待される接着強度は得られないため、後に不快症状をもたらしかねない。 CR修復後の不快症状に悩んでいる方は今一度この項目から見直していきたい。う蝕象牙質の除去を硬さや着色の程度で判断するのは術者の経験によって差が生じる。実際、う蝕治療ガイドライン(日本歯科保存学会)でもどの程度の着色であれば残して良いかについての明確な基準が示されていない。本ガイドラインでは今のところ、う蝕検知液の染色性以上に客観性をもって除去すべきう蝕象牙質を判定できる方法はないと示されており、確実な除去のためにはう蝕検知液の使用を推奨している。また注水下でよく切削できるバーを使用することが歯髄保護の観点からも重要である。接着を阻害する因子は多々あるが(表2)、口腔内の湿潤環境が接着強度に影響を与えているとする文献も多い。考えてみれば口腔内はミラーをかざすだけで一瞬で曇ってしまうほどの水分が多い環境である。そのためボンディング材の性能を発揮するためには口腔内の湿度を可能な限り下げる必要がある。すべての症例にラバーダム防湿ができるかというと現実的には難しいであろう。そこで何かしらの装置(例 APT社:ZOO、センジョー社:ニューサライバー等)や工夫を凝らし湿度を下げた状態で接着処理に移る必要がある。3図1 う蝕検知液を使用して、客観的に除去すべきう蝕象牙質を判定する。う蝕象牙質はDEJで広がる傾向にあるため、目視だけでは残置してしまいやすい。表2 接着阻害因子⚫呼気中の水分⚫唾液⚫血液⚫歯肉溝滲出液⚫う蝕⚫残留した仮着材、仮封材⚫被着面の汚れ etc 術後に知覚過敏が生じる 術後疼痛が長引く 脱離してしまうトラブル1トラブルシュートのポイント❶う蝕を確実に除去できていない?トラブルシュートのポイント❷接着処理前の防湿処置に問題がある?
元のページ ../index.html#3