これだけは覚えておきたい高圧蒸気滅菌器のポイントをまとめました。
第1弾は滅菌器の使い方の再確認です。理解しているようで認識が間違っている場合が多いと思いますので、ぜひご一読いただけると幸いです。
日本市場で導入率が上昇傾向にあるクラスBの高圧蒸気滅菌器を少しでも多くの歯科医院にご紹介するためにも、クラス分類の違いについて正しく理解しましょう。
■高圧蒸気滅菌器はなぜクラス分類が必要?
高圧蒸気滅菌器はなぜクラス分類が設けられているのか。
それは、歯科医院の診療・治療で使用する器材には様々な形態(内部構造の複雑な器材、繊維製品など)のものがあり、その形態や種類によって滅菌ができるか・できないかが違うからです(欧州では、器材による「滅菌できる/滅菌できない」を規格に定めて分類しています)。
歯科医院で使用する器材にどのようなものがあるか、「クラス分類別 高圧蒸気滅菌器で滅菌可能な器材」確認してみましょう。
↓歯科医院で使用する器材はどのようなものがある?(クリックして「クラス分類別 高圧蒸気滅菌器で滅菌可能な器材 早見表」を確認!)↓
また、上記で紹介した器材ですが、どの器材も必ず滅菌する必要があるわけではありません。 詳しくはリスク分析をよく確認してみてください。
出典:株式会社ジーシー.MELAGガイドブック(RKI感染対策) 歯科医院の感染対策.株式会社ジーシー.2024
■正しいクラス分類の意味とは?
よく耳にするクラスB、クラスS、クラスN。
高圧蒸気滅菌器のクラス分類のことを指していますが、このクラス分類をどのように認識していますか?
「クラスNよりクラスBの方がより強力に滅菌できる」、「クラスBは他よりハイクラス」といったように滅菌レベルを表していると思っている方が多いですが、実はそうではありません。
↓高圧蒸気滅菌器のクラス分類とは?(クリックして確認!)↓
クラス分類は「様々な形態や種類の器材を滅菌する際、その器材への蒸気到達性能」を表すものです。
※上記はクラス分類を決定している要因の一つであり、全てではありません。今回は「器材への蒸気到達性能」について内容をまとめている都合上、上記のように記載しております。
■それぞれのクラス分類で何ができる?
高圧蒸気滅菌器のそれぞれのクラス分類で何ができるのか、確認してみましょう。
【クラスB】
クラスBの高圧蒸気滅菌器は固形の器材や繊維製品、内部が中空構造の器材を滅菌することができます。また、クラスBの高圧蒸気滅菌器は器材を滅菌バッグで包装した状態で滅菌することが可能です。
※クラスBの高圧蒸気滅菌器では真空工程がある場合が多く、真空工程では器材の細かいパーツが剝離して滅菌器本体に詰まり、故障を引き起こす恐れがあるため、弊社では滅菌バッグなどに包装して滅菌することを推奨しています。
↓なぜ内部が中空構造の器材の滅菌ができる?(クリックして確認!)↓
クラスBの高圧蒸気滅菌器はプレポストバキュームという方式で滅菌を行います。
プレポストバキュームは下記のように行われます
器材を滅菌するには、器材の細部まで蒸気が直接、一定時間当たり続ける必要があります。クラスBの高圧蒸気滅菌器は滅菌前に真空(負圧)と蒸気の注入(加圧)を交互に繰り返すことで、中空構造の器材内部の残留している空気を抜き、蒸気を細部まで行き渡らせた状態を一定時間確保できます。
この結果、中空構造の器材でも内部まで滅菌することができるのです。
↓滅菌バッグを使用するメリットは?(クリックして確認!)↓
滅菌バッグに包装して器材を滅菌することで、滅菌後の器材を外気に触れることなく保管できるのがメリットです。
↓滅菌バッグの正しい使い方は?(クリックして確認!)↓
器材を滅菌バッグに包装して滅菌する場合、正しい使い方(向きや置き方など)で使用しないと滅菌後に保管できない状態になる可能性があります。なぜ滅菌バッグの正しい使い方が存在するのか。それは滅菌バッグが非常に膨らむ性質を持っているからです。下記動画で滅菌バッグがどれだけ膨らむのか確認してみましょう。
▲▲ 滅菌バッグはどれだけ膨らむ?...滅菌バッグ破裂動画 ▲▲
上記動画を確認いただいた通り、滅菌バッグは非常に膨らむので、正しい向きや置き方で使用する必要があります。滅菌バッグで包装した器材をトレイに平置きで配置した場合の正しい使い方は以下の通りです。
※下記は平置き時の滅菌バッグの正しい使い方の一例です。
上記以外にも滅菌バッグを縦置きで配置する場合などがあります。下記動画で滅菌バッグを縦置きで配置する場合についても確認しましょう。
また、弊社で取り扱っているクラスBの高圧蒸気滅菌器「バキュクレーブ 118 / 318 Prime」では、使用を推奨している滅菌バッグがあります。パンフレット、動画からご確認ください。
滅菌バッグは正しく使用しないと器材が保管できない状態になったり、滅菌器の故障に繋がる恐れがあります。
下記写真のような滅菌バッグの使い方をしている場合、注意が必要です。
【クラスN】
クラスNの高圧蒸気滅菌器は、滅菌バッグで包装していない固形の器材のみ滅菌することができます。
↓なぜ滅菌バッグに包装できない?(クリックして確認!)↓
RKIガイドライン※で、クラスNの高圧蒸気滅菌器は「未包装」状態で使用することが定められているため、滅菌バッグに包装した状態では滅菌することができません。
※ヨーロッパ規格 EN13060という小型蒸気滅菌器に関する規格。
↓なぜ中空構造の器材が滅菌できない?(クリックして確認!)↓
RKIガイドライン※で、クラスNの高圧蒸気滅菌器は未包装の中空構造ではない器材専用の滅菌器として非輸送・非保管・即時使用限定とされているため、中空構造の器材は滅菌することができません。
※ヨーロッパ規格 EN13060という小型蒸気滅菌器に関する規格。
※クラスNの高圧蒸気滅菌器の多くは滅菌前の空気除去について、蒸気で空気を押し出す「重力置換式」が採用されています。この重量置換式は複雑な中空構造器材の空気を十分に除去できない(=蒸気を中空構造内部まで行き渡らせることができない)ため、中空構造の器材を滅菌することができません。
【クラスS】
クラスSの高圧蒸気滅菌器は、固形の器材、中空構造の器材を滅菌することができます。クラスNの高圧蒸気滅菌器で滅菌できる器材以外に一つでも滅菌可能な器材があればクラスSの高圧蒸気滅菌器に該当します。
※上記はメラクイック 12+の内容であり、全てのクラスSの高圧蒸気滅菌器に該当するわけではありません。クラスSの高圧蒸気滅菌器はメーカーによって滅菌できる器材や方法に制限がある場合が多いです。詳しくは各メーカーにお問い合わせください。
※メーカーによる制限の一例は下記の通りです。
例)・滅菌バッグの使用不可
・滅菌バッグの使用により滅菌できる本数に限りがある
・滅菌可能な器材の長さに制限がある
↓クラスSとクラスB、何が違う?(クリックして確認!)↓
滅菌する器材への蒸気到達性能によって区分されています。
(クラスBとクラスSは「器材への蒸気到達性能の条件」が設定されており、その条件がそれぞれ異なっています。)
それぞれの蒸気到達性能は下記のように定められています。
●クラスS⇒非包装(滅菌バッグなどによる包装をしていない)の固体以外にも滅菌可能な器材があり、ハンドピースなどの中空構造の器材への蒸気到達性能が保証されている。※メーカーによって滅菌できる器材の種類や方法に制限あり
●クラスB⇒ハンドピースに加え、繊維製品やチューブ製品、多孔性の製品などの器材への蒸気到達が保証されている。
例)
クラスS⇒コントラやエアースケーラー等のハンドピースの滅菌が可能
クラスB⇒コントラやエアータービンに加え、ガーゼ、ワッテ、チューブ類、インプラント用インスツルメントを入れた滅菌容器などの滅菌が可能
ここだけチェック!
★クラスBの高圧蒸気滅菌器
→固形の器材、中空構造の器材、繊維製品、チューブ製品、多孔性の製品などへ蒸気を行き渡らせ、滅菌することができる。
→非包装の器材だけではなく、滅菌バッグで包装した器材も滅菌することができる。
★クラスNの高圧蒸気滅菌器
→滅菌バッグに入れていない固形の器材のみ滅菌することができる。
→滅菌バッグに入れた器材は滅菌することができない。
→中空構造の器材は滅菌することができない。
★クラスSの高圧蒸気滅菌器
→固形の器材、中空構造の器材へ蒸気を行き渡らせ、滅菌することができる。
→クラスNの高圧蒸気滅菌器で滅菌できる器材以外で一つでも滅菌可能な器材があればクラスSの高圧蒸気滅菌器に該当する。
高圧蒸気滅菌器を正しく使用することが、歯科医療従事者・患者への感染対策に重要なことを再認識いただけたでしょうか?
滅菌器は歯科医院の治療で使用する器材の再利用に欠かせないものです。
正しく使用しないと、滅菌できていない器材を繰り返し治療に使用するという院内感染の原因となってしまいます。
ぜひ歯科医院に訪問する際に導入している滅菌器や診療で使用している器材、滅菌バッグの使い方を見てみてください。

参考文献:中村健太郎(監著者).歯科医院のための感染対策マニュアル RKIガイドラインに基づいたルーティンワーク.クインテッセンス出版株式会社.2022


