III ガムとチューブによる咀嚼訓練

III ガムとチューブによる咀嚼訓練

 
1)ガムによる咀嚼訓練

東京大学口腔外科の西原克成先生は「口の正しい使い方で大概の健康は保証される」つまり、ガムを正しく噛むだけで、鼻腔、口腔、扁桃部の免疫が活性化して、顔の表情が豊かに生き生きしてくると述べている。

ガムは1枚で約500回の咀嚼を行う。毎日2回5分間、約3ヵ月の間、ガムを使用した咀嚼訓練を行うことで、咬合力は2倍も増大し、噛む時の開口度が15~20mmの時に咬合力は最も効果的に発揮できると報告されている。

咀嚼訓練に使用するガムは硬度の関係上、生協の『カムゾーガム』を使用する(写真5)。訓練では、咬合力を増加させる目的であるから、ガムをくちゃくちゃと噛むのではなく、意識的に口を開いて、1日10分2回の噛み締める咀嚼をすることを指示する。噛む部位は第一小臼歯を中心に噛む訓練をする。特に咬合バランスが第二大臼歯にある場合は大臼歯で噛むことは禁止している。片噛みなどにより、左右の咬合バランスに差がある場合は弱い部位を中心に訓練をする。

alt 写真5
咀嚼訓練用のガム。ただくちゃくちゃと噛んでいるだけでは訓練にならず、1回毎に、小臼歯部で噛み締める意識が必要である。特に、咬合バランスに問題がある場合は、噛みやすい方で噛むと問題を生じるので注意が必要である。
2)チューブによる咀嚼訓練

噛ませる試料の厚さを1.5mmから3.5mmと変化させると咀嚼筋は試料が厚いほど筋活動量も大きくなると報告されている。

訓練には水槽に用いる直径約6mmのエアーチューブを使用する。チューブは左右の第一小臼歯に当てて訓練時間は1日10分2回の訓練を原則としている。チューブにワイヤーを通して、馬蹄形に形成すると操作がしやすくなる(写真6)。

咬合バランスに差がある場合はガムの訓練と同様にチューブを直線にして、咬合力の減少している側で噛む訓練をする。

咀嚼訓練の際には、下顎角前方の咬筋の付着部位と、こめかみの前方の側頭筋の付着部位を指で触りながら、筋肉の活動量と左右差が生じていないかを確認する。子供の場合には保護者が確認する(写真7)。咬合力の減少している場合はこれらの触診は微弱である。

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写真6
咀嚼訓練用のチューブ。練習の用具は身近で、安価なものでなくては長続きしない。(水槽のポンプ用チューブで製作)
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写真7
咀嚼訓練の様子。 患者が幼児の場合は、母親が親指で、こめかみの側頭筋前腹、中指で下顎角部の咬筋を必ず触れて咀嚼訓練を行う。患者自身が触れる場合は親指が咬筋、中指は側頭筋となる。筋の動く量と左右差の有無を必ずチェックする。チューブがある場合と、ない場合では、筋の活動量が大きく変わるので、今まで、正しく噛んでいなかったことに患者、母親が驚くケースが多い。