7月8日(土)・9日(日)の両日にわたり、札幌市・札幌コンベンションセンターSORAにて、年1回開催化の最初の大会として「第115回日本補綴歯科学会学術大会」が開催され、約2,400名の参加者がありました。 今回は、「咬合・咀嚼が創る健康長寿」をメインテーマに、特別講演、海外招待講演2題、ジョイントシンポジウム、シンポジウム3題、研究セミナー3題、臨床スキルアップセミナー2題、歯科技工士セッション2題、歯科衛生士セッション、課題口演、一般口演、ポスター発表、市民フォーラム等が行われ、たいへん盛況でした。 大会長は、北海道医療大学歯学部歯科補綴学第一講座の平井敏博教授でした。 特別講演は、学会理事長の赤川安正先生の座長のもと、北海道医療大学学長で遺伝子分野における第一人者でもあられる松田一郎先生より、「先端医療と生命倫理」という演題にてご講演いただきました。先端医療への社会対応が世界各国間で必ずしも同じではないのは、生命倫理に対する各国の文化、社会情勢、宗教等の違いが関係しているからであり、生命医学倫理を理解するためには、共通の倫理観(伝統的な倫理学)のみならず、その国の文化・社会慣習に着目すべきであることが示唆されました。 海外招待講演はそのI にてデンマーク・オーフス大学教授のPeter Svensson先生より‘Prosthodontics and Orofacial Pain:Implications for Management’という演題で、口腔顔面痛に関する神経学的・心理学的背景および発生のメカニズムについて解説いただきました。 そのIIでは、スイス・ベルン大学のRegina Mericske-Stern先生より‘Biomechanical and Epidemiological Consideration of Implant Supported Overdenture’という演題で、科学的エビデンスの少ないインプラント支持オーバーデンチャーに付いて、疫学的、およびバイオメカニカルな側面から整理していただきました。 ジョイントシンポジウムは「歯科補綴は嚥下障害にどう関わるか?」という演題にて日本顎口腔機能学会および日本顎顔面補綴学会との共催で行われました。座長の東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面補綴学分野教授の谷口尚先生から、咬合が回復すれば嚥下障害も回復されるという誤った考え方が多かったのではないかという反省の弁を皮切りに、4名のシンポジストにより進行されました。 新潟大学歯学部長の山田好秋先生が「口腔生理学の立場から」という演題で、広島大学大学院医歯薬学総合研究科先端歯科補綴学研究室の吉田光由先生が「歯科補綴学の立場から」という演題で、大阪大学大学院歯科研究科顎口腔機能再建学講座の小野高裕先生が「口腔腫瘍術後患者の嚥下障害に対する補綴的アプローチ」という演題で、川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科教授の熊倉勇美先生が「言語聴覚士(ST)の立場から」という演題でそれぞれ講演され、最後に活発な質疑応答がなされました。 市民フォーラムは、別会場のサッポロファクトリー・アトリウム内で、「歯ってさ・・・」というテーマにて、一般市民の方々に補綴歯科という言葉の認知・広報を計る目的で、北海道医療大学の共催、札幌市の後援にて開催されました。 午前の部は、児童とその家族を対象に体験学習、エプロンシアターが行われました。午後の部は、一般市民を対象に口臭測定等の体験コーナーと、補綴専門医、患者様代表者、地元のテレビ・ラジオの解説者等が自身の治療体験談を語ったり、質疑応答に解説をしたりするステージイベントが行われたくさんの市民の方が参加されました。 なお、次回大会は、平成19年5月19日(土)・20日(日)に神戸市の神戸ポートピアホテルにて開催される予定です。大会長は、大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学の井上宏教授です。 |