5月12日(土)・13日(日)の両日にわたり、札幌コンベンションセンターにて「第49回日本歯科理工学会学術講演会」および「第25回日本接着歯学会学術大会」が同時開催され、500名近い参加登録者がありました。 学術講演会は、特別講演3題、シンポジウム1題、口頭発表44題、ポスター発表143題が行われ、広範囲にわたる内容の発表でたいへん盛況でした。 大会長は、北海道医療大学歯学部歯科理工学講座の大野弘機教授でした。 特別講演1は、「医療に向けた自己組織化等の分子配列制御による機能性材料の創製」と題し、岩手医科大学歯学部歯科理工学講座の荒木吉馬教授を座長に、北海道大学から今年4月より東北大学多元物質科学研究所の教授に着任されたばかりの下村政嗣先生より、ナノ・マイクロスケールでパターン化した培養基材を用いて、細胞の接着や機能制御を行う研究について分かりやすく解説いただきました。 特別講演2は、「認知症高齢者の世界-虚構を生きる-」と題し、大会長の大野弘機教授を座長に、北海道医療大学看護福祉学部の阿保順子教授により、認知症とは何かという生物医学的な知識だけではなく、虚構の世界を生きている認知症の人々を理解することにより、人間とは何か、生きると言うことは何かを考えさせられるという興味深い講演がありました。 特別講演3は、「接着歯学の現在と未来」と題し、日本大学歯学部歯科保存学第一講座の宮崎真至教授を座長に、日本接着歯学会会長で東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野教授の田上順次先生と東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長の安田登先生からそれぞれ講演がありました。田上先生は、接着技術が歯科医療に与えた革新的な治療法確立の歴史を時系列的に解説され、更に今後は今あるものの延長線上にある技術開発と、新技術の創造が必要不可欠になると提言されました。安田先生は、リハビリテーション医療(機能回復・審美性回復等)および疾病を治癒させ生理的に正常状態に戻す治療行為の両方にすでに重要な役割を果たしている接着歯学が、今後更なる飛躍をするためには、一般臨床への普及、学生教育等底辺の拡大が必要になるであろうと投げ掛けられました。 シンポジウムは、「抜去歯を応用した移植・再建医療」という共通テーマで、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生体材料学分野の鈴木一臣教授を座長に、4名のシンポジストの先生により開催されました。広島大学病院口腔健康発育歯科・矯正歯科講師の河田俊嗣先生より「ポスト「ティースバンク」歯の再生医療-トランスレイショナルリサーチ-」について、新潟大学大学院医歯学総合研究科組織再建口腔外科分野助手の芳澤享子先生より「歯の移植と凍結保存」について、北海道医療大学歯学部口腔外科学第二講座助教授の村田勝先生より「歯で骨をつくる-歯のバイオリサイクル医療システム-」について、同大学歯学部歯科保存学第二講座教授の斎藤隆史先生より「象牙質マトリックス成分を利用した骨・象牙質再生」についてそれぞれ講演され、最後に活発なディスカッションが行われました。 なお次回大会は、理工学会は2007年11月21日(水)~24日(土)にタイ・バンコクにて国際歯科材料会議2007として、接着歯学会は2007年11月17(土)・18日(日)に福岡・九州大学百年記念講堂にて日本歯科審美学会との共催として開催される予定です。 |