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黒く変色した歯は白く戻せる?
神経が死んでしまった歯のホワイトニング治療

歯科医師監修

医療ホワイトニングコラム

医療ホワイトニングについて効果や
よくある質問などを全国の歯科医師・
歯科衛生士がわかりやすく解説します。

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はじめに

皆さん、こんにちは。神奈川歯科大学 歯科保存学講座 保存修復学分野教授の向井義晴と申します。同大学附属病院では保存・修復診療部門の部門長として治療や若手歯科医の指導を日々行っております。

私たち保存・修復診療部門はむし歯の治療をメインに行っていますが、歯のホワイトニングも行っています。コロナ禍で長かったマスク生活がなんとか落ち着いてきましたので、黄ばんだ歯を白くしたいという希望が増えています。また、私共の研究室ではホワイトニングが歯に与える良い影響についても研究し、論文も発表しています。最近の研究では、ホワイトニングには抗菌効果やむし歯予防効果、歯の再石灰化を促す効果があることがわかってきました。つまり、ホワイトニングは単に歯を白くするだけでなく、さまざまな恩恵をもたらしてくれる治療法なのです。

本コラムでは、神経が死んでしまって変色した歯の対応法についてお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2神経が死んでしまった歯(失活歯)と、その変色

こちらの写真のように、前歯が1本だけ黒っぽくなっている人を見たことがありませんか?

これは、運動中の転倒や事故などで前歯を強くぶつけてしまい、歯の神経が死んでしまった場合や、むし歯が深く進行して神経がダメージを受けた場合に起こります。一般的に「歯の神経」と呼ばれている部分には、血管もたくさんあり、神経が死んでしまったと言われる状態では血管もダメージを受けていて血液成分が歯の中に染み出てきます。これが歯を黒っぽく変色させている原因です。

こうした黒ずんだ歯に対しては、まず変性した神経(歯髄)を取り除き、歯の中をきれいにしたうえで樹脂で詰める治療を施します。専門的には「歯内治療」と呼んでいますが、一般的には「歯の根の治療」と呼ばれています。しかしながら、根の治療をしっかり行ったとしても、黒ずんだ変色が改善されず、そのまま残ってしまうことも多いです。

3失活歯のホワイトニング治療について(ウォーキングブリーチ、インターナルブリーチについて)

では、このように黒ずんだ歯にはどのような治療法があるでしょうか?もちろん、黒ずんだ歯を削って白い被せ物をする方法がありますが、被せ物をする場合は健康な歯の表面を削ってしまうため、抵抗がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、その歯がむし歯になっていない状態であればなおさらかと思います。このようなケースでは、ホワイトニングで変色を改善する方法があります。前述したように黒ずんだ歯にはまず、「根の治療(歯内療法)」を行います。具体的には、歯の表面は削らずに裏側から小さな穴を開け、ダメージを受けた神経を取り除いてきれいにした後、樹脂で詰めます。従って、歯の表面は削らないので、見た目はそのままです。

そして、この裏側の穴に薬剤を入れて歯を白くするホワイトニングの手法が2種類あります。ウォーキングブリーチとインターナルブリーチです。

 

ウォーキングブリーチは、過ホウ酸ナトリウムと過酸化水素水を混ぜた薬剤を神経が入っていた穴に詰め、セメントで仮のふたをした状態で帰宅していただきます。

術前
漂白剤填入後
(過酸化水素水と過ホウ酸ナトリウムを
ペースト状に混和し填入)

1週間から10日経過後に再来院し、白さの状態を確認します。あまり白くなっていないようであれば薬剤を再度入替えます。

術後
(2回施術)

この方法は歯の表面を削らず、複数回の薬剤交換の入れ替えを繰り返すことで白くしていく治療法ですが、次回の来院までにセメントのふたが取れたり、薬剤が漏れ出てくることがあるため、最近はインターナルブリーチという方法に移行されるようになってきています。インターナルブリーチもウォーキングブリーチと同様に歯の裏側に小さな穴を開けてホワイトニングの薬剤を入れるのですが、同時に歯の表面にも薬剤を塗ります。また処置は診療室内で診療時間内に完結し、帰宅するときには薬剤は取り除きますので薬剤が漏れ出す心配もありません。詳しくは次の章でお話ししましょう。

4インターナルブリーチの手順(症例含む)

神経が生きている歯のホワイトニングには「ホームホワイトニング」と「オフィスホワイトニング」が用いられますが、この2つについてはすで他の方のコラムでお話があったと思います。インターナルブリーチでは、このうちオフィスホワイトニング用の製品の薬剤を使用しますが、インターナルブリーチ用として厚生労働省の認可が得られている薬剤は現在のところ3製品に限定されています。

このうちの1つを用いて、黒ずんでいる上の前歯(中切歯)をインターナルブリーチで治療した症例をご紹介します。術前の写真では黒ずんでいる前歯2本がお分かりになるかと思います。

インターナルブリーチのお薬を塗る前に、歯ぐきに薬剤がつかないように青い保護材を塗ります。裏側に小さい穴を開け中にオフィスホワイトニング用の薬剤を入れるとともに、歯の表面にも同じ薬を塗ります。その後、光を当てて薬剤を活性化させ、薬剤を取り除き、再度新しい薬剤を塗って光を当てるという手技を繰り返します。

前歯を横から見た図

わかりやすく歯の断面の絵を描いてみました。専門用語も記載されていますが、ご理解いただけますでしょうか?

施術前後の写真を見ると、複数回の来院・施術で歯が白くなっていく様子がわかります。歯の裏の小さな穴をホワイトニング完了後2,3週間してから硬い詰めものでしっかりふさいで治療終了です。

術後

5失活歯ホワイトニングの注意点

ウォーキングブリーチやインターナルブリーチを行う歯は、根の治療が適切に行われているということが前提になります。もしも根の治療が不十分だった場合、ホワイトニングの薬剤が根の先の方まで浸み込んでしまい、根の先に痛みや炎症を引き起こす可能性があります。特に「かなり昔に根の治療を行った記憶がある方」は注意が必要です。歯科医師はウォーキングブリーチやインターナルブリーチができる根の状態かどうかをエックス線撮影などによりチェックします。根の治療が不完全であれば歯科医師から「まずは根の治療をしましょう」という提案がありますので、それに従っていただければと思います。

6まとめ

今回は、歯の神経が死んでしまった歯(失活歯)のホワイトニングについて解説いたしました。現在、歯科界ではミニマルインターベンション(最小限の介入)という概念が重要視されています。この考え方では、むし歯があっても可能な限り削る量を少なくして、歯と接着する詰め物で治していこうという治療が選択されることが多く、そのほうが歯の寿命が長くなると言われています。神経が死んでしまった歯(失活歯)には、これまでは大きく削って被せ物や差し歯にする治療法が主流でした。しかし現在では、歯を大きく削らなくても白くできるインターナルブリーチという方法も確立されています。是非、治療の選択肢として覚えておいていただけたら幸いです。

  • 向井 義晴 先生

    神奈川歯科大学 歯科保存学講座
    保存修復学分野 教授

    向井 義晴先生

  • 主な資格・所属学会

    日本歯科保存学会 理事

    日本歯科専門医機構認定 歯科保存専門医・指導医

    日本歯科審美学会 理事・認定医

    日本接着歯学会 接着歯科治療専門医・指導医

    日本歯科理工学会

    日本口腔衛生学会

    日本レーザー歯学会

    略歴

    1988年

    神奈川歯科大学卒業、神奈川歯科大学大学院入学(保存修復学専攻)

    1992年

    神奈川歯科大学大学院修了(歯学博士)、神奈川歯科大学保存修復学講座助手

    1999~2000年

    Academic Center for Dentistry Amsterdam (ACTA) 客員研究員

    2004年

    神奈川歯科大学 歯科保存学講座 講師

    2008年

    神奈川歯科大学 口腔治療学講座 保存修復学分野 准教授

    2016年4月1日~現在

    神奈川歯科大学 歯科保存学講座 保存修復学分野 教授