GCロゴ

医療ホワイトニングで用いる「医療機器」とは?

歯科医師監修

医療ホワイトニングコラム

医療ホワイトニングについて効果や
よくある質問などを全国の歯科医師・
歯科衛生士がわかりやすく解説します。

医療ホワイトニングコラムのイメージ画像 医療ホワイトニングコラムのイメージ画像

はじめに

歯のホワイトニングが急速に普及してきました。昔は「歯の漂白」や「ブリーチ」と呼ばれていましたが、1980年代の半ばから「歯のホワイトニング」と言われるようになりました。今では、歯科医院で行われるホワイトニングを「医療ホワイトニング」と呼ぶようになってきています。しかし、歯科医師国家試験や学術的な本では今でも「歯の漂白」や「ブリーチ」と呼ばれています。これは、むし歯を学問的に「齲蝕(うしょく)」と呼ぶのと似ています。

2医療ホワイトニングで歯を白くするクスリは「医療機器」?

「医療ホワイトニング」とは、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が歯科医師の指導のもと医療機器を使って行うホワイトニングのことです。「歯のホワイトニングは、歯に薬を塗るのでは?」と思うかもしれませんが、ホワイトニング剤は日本では「歯科材料」とされています。歯科材料には、歯にかぶせたり詰めたりする材料などがありますが、これらは厚生労働省によって「医療機器」の一部とされています。

医療ホワイトニングには、診療室でホワイトニング剤を歯に塗って光を当てて行う「オフィスホワイトニング」と、家で行う「ホームホワイトニング」があります。オフィスホワイトニング材は「歯科用漂白材」、ホームホワイトニング材は「医薬品含有歯科用歯面清掃補助材」という医療機器の名前(一般的名称)が付いています。

ポイント
医療ホワイトニングは歯科医院で医療機器を用いて行う医療行為

3「医療機器」って何?「医薬品」、「医薬部外品」と同じ?

医療機器は、クスリ(医薬品)と同じように、製造して販売するためには国の承認等(承認、認証又は届出)が必要です。「医薬品」に似た名前のものに「医薬部外品」があります。「医薬部外品」は、効能・効果が認められる成分が入っていますが、治療よりも予防を目的としたものが多く、薬剤師がいないドラッグストアやスーパー、通信販売でも購入できます。例えば、フッ素入りの歯磨剤や洗口液などが医薬部外品です。なお、医薬部外品の製造・販売にも厚生労働大臣又は都道府県知事の承認が必要です。

4「医療機器」を作って売るためには?

ホワイトニング材のような医療機器を製造して販売するためには、「効果があるかどうか」と「安全に使えるかどうか」について審査され、国からの承認等をもらう必要があります。例えば、まったく歯が白くならないホワイトニング材が販売されると歯科医師も患者さんも困ります。また、歯が白くなっても命に関わるような強い副作用があると大変です。そこで、医療機器には効果があるか(有効性)と安全か(安全性)を審査したうえで、製造・販売が承認されます。医薬品や一部の医療機器は「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」で審査されます。

医薬品も医療機器も命に関わるような危険なものでは困るので、PMDAで厳しい審査が行われます。一方で、優れた医薬品や医療機器が早く患者さんの役に立つよう、PMDAはスムーズな審査を目的として、開発している企業へ様々な助言も行っています。有効性と安全性の確保という点でPMDAと企業が協力して、新しい医薬品や医療機器が患者さんに早く届くように努力がなされています。

5「医療機器」のオフィスホワイトニング材とホームホワイトニング材

現在販売されている製品のうち、オフィスホワイトニング材は6製品、ホームホワイトニング材は10製品が製造・販売の承認を受けています。(2025年4月現在)

オフィスホワイトニング材、ホームホワイトニング材はすべて、主成分が過酸化物(過酸化水素や過酸化尿素)です。したがって「過酸化物を使わない」と宣伝しているホワイトニング材は、国から医療機器のホワイトニング材として製造・販売の承認を受けていません。

オフィスホワイトニングでは、ホワイトニング剤を歯に塗ってから光を当てますが、この光を当てる装置(光照射器)も医療機器です。これらの使用説明書には「ホワイトニング剤を歯に塗ってから光を当てる」と書かれています。したがって、「ホワイトニング剤を塗らずに光を当てるだけで白くなる」「光を当てなくても白くなる」という方法は国から認められていません。

ホワイトニングジェルの塗布、光照射のイメージ
ポイント
医療ホワイトニングは過酸化水素や過酸化尿素を使用
現在販売されている製品のうち、オフィスホワイトニング材は6製品、ホームホワイトニング材は10製品が承認されている

6「未承認品」・・・製造・販売の承認を受けていないホワイトニング材

歯のホワイトニング材は医療機器として、国から製造・販売の承認を得なければなりませんが、国内承認を受けていないホワイトニング材もあり、「未承認品」と呼ばれます。日本で製造・販売の承認を受けていない製品はすべて未承認品です。海外で販売されている未承認品については、患者さんが個人で一定量を輸入することは認められています。しかし、安全性の面から国は推奨していません。厚生労働省のホームページでも、未承認品の個人輸入には注意を呼びかけています。※1

※1 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

医師や歯科医師が未承認品を国の許可を得て個人輸入し、治療に使うことは認められていますが、緊急性があり、かつ代替品がない場合に限られますので、ホワイトニング材は該当しないと考えられます。また、未承認品の広告は禁止されています。

7安心安全な医療ホワイトニングで白い歯を

日本では現在、多くの種類のホワイトニング材が製造・販売の承認を得て提供されています。オフィスホワイトニングやホームホワイトニングで未承認のホワイトニング材を使用する必要はありません。そのような背景から、日本歯科審美学会のホームページでは、「医療ホワイトニングは、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が“承認された”医療機器を使って行うホワイトニング」としています。※2

医療ホワイトニングで得られた歯の白さは永久に続くものではなく、残念ながら徐々に元に戻りますが、その程度には個人差があります。歯の色の後戻りを防ぐには、毎日のセルフケアと定期的に歯科医院で行うプロフェッショナルケアが効果的です。適切なセルフケアとプロフェッショナルケアは、むし歯と歯周病の予防にも効果があります。

※2 一般社団法人日本歯科審美学会 お知らせ 「歯のホワイトニングについて」
https://www.jdshinbi.net/information/whitening.php

8医療ホワイトニングで口腔の健康を

歯科医院で行われる医療ホワイトニングは、単に歯を白くすることだけが目的ではありません。歯が白くなることで患者さんに喜んでもらうのはもちろんですが、歯の白さを保つために口腔ケアに関心を持ってもらい、それが口腔疾患の予防につながることを願っています。すべての人が健康な白い歯で生活することが、歯科医師や歯科衛生士の願いです。

  • 大槻 昌幸 先生

    東京科学大学 非常勤講師

    大槻 昌幸先生

  • 資格・所属学会

    日本歯科審美学会 元理事長/認定医

    日本接着歯学会 指導医・専門医

    日本レーザー歯学会 専門医

    略歴

    1984年

    東京医科歯科大学歯学部 卒業

    1988年

    東京医科歯科大学大学院歯学研究科 修了

    1988年

    東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第一講座 助手

    2008年

    東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野 准教授

    2024年

    同 退職,現職