健全な歯並びや咬み合わせを得る

成長期においては正しい機能が理想的な形態を作ります!

健康な口の機能を正しく育てることで、健全な歯並びや咬み合わせが得られます。歯の生える前の哺乳期から乳歯が生え始める時期である離乳期を経て、食べる機能(摂食機能)を獲得する過程で乳歯が生え揃っていきます。全ての乳歯が生え揃う3歳頃からは、食品を唇で捕らえる、前歯で嚙みきる、奥歯ですりつぶす、食品を唾液と混ぜ合わせて食塊を作る、飲み込むという一連の機能が習熟していきます。このような機能の発達がうまく行われることが、理想的な口元や歯並びを形作る条件になります。そして機能の発達と形態的な成長は車の両輪のように切り離すことができません。また哺乳から咀嚼機能を獲得する過程で嚥下(飲み込む)機能も変化します。このように摂食機能は人生の最初の時期である乳幼児期に大きく発達を遂げて、基本的な口の機能を身につけます。

 食品を咀嚼する際には、舌と口の周りの筋肉(頬や唇)が協調して働くとともに、安静にしている時にも、顎の骨や歯に一定の力が働いています。特に成長期では、顎の骨そのものにも筋肉の力が加わっていますが、歯の生え揃う位置や歯の方向も、舌と口の周りの筋肉の力のバランスによって決まってきます。絶えず口で息をしている場合(口呼吸)や、指しゃぶりなどの口の周りの癖は、顎の骨の成長方向や歯の位置を変化させてしまいます。成長発育期の小児、特に乳幼児から学童期にかけて、口の機能が顎の骨の形や歯並び、咬み合わせ、さらには口元や顔つきを決定するといっても過言ではありません。 

 

 

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上あごの幅の成長に舌は重要な役割を果たしています(顔を前から見たときの断面図です)。

 

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安静時の呼吸は鼻からが基本。このとき唇は閉じて、舌は上あごに穏やかに密着させています。
このとき歯・唇・舌の関係が正しい口腔の発達に大切です
口呼吸の癖がないか注意しましょう。

 

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歯に口の内外から絶妙なバランスの力が絶えず加わることできれいな歯並びが生まれます。

 

 

 

著者

木本 茂成 先生

神奈川歯科大学歯学部 小児歯科学講座 教授